石場建ての家ができるまで #03墨付け・刻み
- hisae ichiki
- 7月2日
- 読了時間: 3分
金物をあまり使わない石場建ての家では、私たちの場合、木の本来の特徴である柔軟性やツヤのある 天然乾燥材 を使います。フジイチさんと直接、また電話でも何度もやりとりさせていただいて、この場所にこういう材料を使いたい など細かく相談させていただきました。
何度も相談にのっていただき、有難かったです。
今回は二世帯で家も大きいので材料の拾い出しにも時間がかかりました。検討と相談を重ねて、発注。その後のスケジュールなども細かく連絡してくれました。


材料が搬入されたらいよいよ墨付けが始まります。
時間がない中で構造計算をしていただいた悟工房 山中さんの図面と、設計のストラクトス 大島さんの図面を照らし合わせながら、木の組み方に添って棟梁が墨付けをし、墨付けしたものを大工が刻んでいきます。墨付けはかなり神経を使う期間。
親方は組み方をじっくり考えて悩みもしていたので、この期間の作業場はかなり緊張感の伝わってくる雰囲気がありました。自宅へ帰ってからもずっとこの家のことを考えているような日々が続きました。寝る間を惜しんで、組み方を考える。家と向き合い続ける…それだけ、この家にかける思いは強かったですし、意識がそこに集中し、生活の中心になっていたのです。神経がすり減りそうな時もありましたが、建った時に必ず良かったと思える、お施主さん家族みんなが喜んでくれる。そういった楽しみが、常に親方を支えていました。お施主さんもそれだけ楽しみにしてくれていましたし、何といっても、「市来さんの好きなようにやってください」と信頼をおいて任せてくださっていました。そんな風に思ってもらえたら、励みになるし、心強かったです。お施主さんと一緒につくっている意識がこの家への思いにも繋がっていました。
さて、墨付け・刻みには約3~4か月ほどかかりました。職人一人一人が木と向き合い、自分の仕事とも向き合う時間でした。刻みながら、どのように組まれていくのかイメージをする期間でもあり、若い大工・経験がまだ浅い大工にとっては、箇所によっての組み方を学びながら刻んでいく期間です。刻みと同時に、自分たちの手道具とも向き合い、空いた時間や朝早く、仕事後…自分自身で時間を作って道具の手入れもしていきます。自分の道具を大切にすることは自分自身の仕事を大切にすることにも繋がります。自分で鋸の柄を作る大工もいました。お互いに道具を見せ合いながら、大工談義も盛り上がっていた時期です。
上棟に向けてみんな気持ちが前向きになっていきました。




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